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校長先生から

校長先生から

  • 「近い未来の君たちへ」
    ~令和4年度 卒業証書授与式 式辞より~

    校長 髙橋正敏

    公認心理師(国家資格)
    修士(臨床心理学)

  •  (前略)今日、この日を迎え、卒業生の皆さんは、どのようなことを思い出しているでしょうか。皆さんの多くが入学して間もなく、全国で一斉休校が始まりました。登校が再開しても、楽しみにしていた行事の多くは次々と中止、または延期となってしまいました。今年度は、規模を縮小した修学旅行、遠足や球技大会、芸術鑑賞会など、思い出を作る機会を少しだけ催すことができましたが、3年間を通して予定通りに行えなかったことが多く、皆さんには本当に残念な思いをさせてしまい、申し訳なく思っています。

     しかし、皆さんがコロナ禍における様々な変化や制約、新しい生活様式を素直に受け入れてくれたおかげで、校内で感染が拡大するようなことはありませんでした。同じように、本校での生活という、人生における大きな変化もしっかりと受け入れたことで、皆それぞれに自分自身を見つめ、少しずつですが確実に成長してきました。

     人によっては小学校、もしくはそれ以前から、または、中学校時代、高校に入ってからも、自分だけにしかわからない不安や悩みを抱えていたことでしょう。 友達を作れなかった中学時代、友達がたくさん出来ますように、と縁結びの神様に祈った生徒がいました。持病があり、毎日登校できないんじゃないかと、学校説明会で不安そうな顔をしていた生徒がいました。入学後間もなく、教室に入れなくなり、一時期は個別学習室で過ごしていた生徒がいました。郡山から新幹線で、庭坂からは自転車で登校する生徒がいました。話すことが苦手でも、級友や先生とたくさん話がしたくて、放課後必死に会話の練習をしていた生徒がいました。一度入学した高校ではうまく適応できず、転校して人一倍頑張った生徒がいました。人よりも長い高校生活の中、年下のクラスメイトとも気さくに接してくれた生徒がいました。修学旅行初日の朝、転んで足を怪我しても、辛さを見せず精一杯楽しんだ生徒がいました。黒板消しや出席簿を、我先にと先生の代わりに持ってきてくれる生徒がいました。ご家族のご不幸にあいながらも、学校ではずっと笑顔で過ごしていた生徒がいました。進学や就職、また卒業に向けて、最後まで真剣に努力する生徒がいました。卒業を間近に控え、もっと学校に来たい、来年もここにいたいと言った生徒が何人もいました。皆さん全員のことをここでお話しする時間はありませんが、そんな生徒達、今みんなここにいます。今ここでこうやって、私の話を聞くことができているのは、皆さん一人ひとりの努力と、皆さん全員が朋として、仲間として関わることができた成果だと私は思います。なぜそのような関わりができたのでしょうか。今年度私は校長になり、中学校の先生や中学生などに、この学校のことを紹介する機会が増えました。この学校のことを紹介するということは、皆さんのことを紹介するということです。具体的に論理的に、合理的にわかりやすく紹介しようと思えば思うほど、頭の中で明確になり、口にしていた言葉はこうでした。みんなやさしい生徒達です。

  •  (中略)終わりに、この学校で皆さんと出会えたこと、皆さんから教えてもらったたくさんのこと、皆さんが私を先生と慕ってくれたことに感謝するとともに、皆さん一人ひとりが、それぞれの世界に向けて力強く旅立ち、その前途が洋々たることを願って式辞といたします。